バレンタインデーを公休にした後輩の話
今週のお題「バレンタインデー」
私が勤める会社では、休みの日(公休日)を比較的自由に設定できる。
土日祝日休み、みたいにあらかじめ決められているのではなく、
月毎に一定数の休み(たいてい8日か9日)が与えられ、
それを同じ部署のメンバーと調整しながら、好きな日に設定するというわけだ。
2月14日水曜日、私の後輩Aさん(仮称)は公休であった。
彼女は土日を休みにすることが多いのだが、この週はめずらしく平日を休みにしていた。
別に、いつ休みをとろうが彼女の自由だ。
ただし、今回の「バレンタインデー公休」には、彼女の複雑な思いがあったように私は感じている。
Aさんは、責任感が強く協調性もあり、会社の評価も高い。
自分が任されている仕事は必ず納期までに終わらせようとするし、挨拶も元気で明るく、色んな部署の人間とコミュニケーションを取れている。
そんなAさんだが、1つだけ欠点(?)のようなものがある。
彼女は、他人に相談することが苦手なのだ。
責任感の強さゆえか、何でもかんでも自分で抱え込もうとする。
私は何度か、仕事の上でAさんの相談にのったことがあるのだが、
こちらから少し質問してみると、必ず何かしらの答え・仮説が返ってくる。
誰かに相談するにしても、先に自分でとことん考え、思い悩んでから。
Aさんはそんな人間なのだ。
今年の2月14日は、Aさんが今の部署に来て初めて迎えるバレンタインデーだった。
彼女はきっと、さまざまなことを思い悩んだことだろう。
・誰に渡し、誰に渡さないか
・前の部署や女性社員にはどうするか
・何を渡すか
・どれだけお金をかけるか
・いつ買いに行くか
・いつ渡すか
...
Aさんは、これら1つ1つの要素について、人一倍考えたことだろう。
もしくは、直近の業務が忙しく、あまり考える時間を取れなかったのかもしれない。
どちらにせよ、バレンタインデーまでに納得のいく答えを出せないと感じた彼女は、2月14日を公休にしたのではないだろうか。
もしかしたら、私の勘違いかもしれない。
彼女の中ではとっくに、バレンタインデーについての結論が出ていて、
「渡すのは14日じゃなくてもいいか」と、単に14日の水曜日を休みにしたのかもしれない。
ただ私にとっては、今後も彼女といっしょに仕事をしていく上で、
今回の「バレンタインデー公休」から考えさせられることがあった。
先輩として、時には「積極的に相談に乗りにいく」ことも重要なのではないか、ということだ。
「相談に乗る」というのは、基本的に受け身の行為だ。
相手から相談を受けてはじめて成立する。
ただ、Aさんみたいに思い悩んだ挙げ句バレンタインデーを公休にしてしまうタイプ(?)の相手には、
相手の悩みを察知して、こちらから声をかけて相談を引き出すぐらいのことも、時には必要ではないかと思うのだ。
相談に乗るとはいっても、アドバイスをしなければならないというわけではない。
相手の話を聞いてあげるだけでも十分だ。
人に話すことで、自分の考えが整理されることがある。
Aさんみたいなタイプは、自分で物事を考えるのが得意だ。
先輩である私に必要なのは、話を聞いてあげて、頭の中がパンクしないように、考えがまとまるように手助けしてあげることなのだろう。
2月15日、Aさんは元気に出社して、部署のみんなにチョコを配っていた。
そのチョコは日本酒入りで、どんな味がするか気になるから買ってみた、とのことだった。
Aさんはアルコールに強くないので、自分では食べず、みんなの反応を楽しみたいらしい。
そういって笑うAさんの顔は、入試が終わった後の受験生みたいに、何かから解放されたかのようにスッキリしていた。